『リアリティのダンス』(2013)La danza de la realidad
去年の春くらいにはホドロフスキーさんがフィリップ・カモワン氏との共同研究によって創りだした(または復興した)カモワン・タロット(正確にはカモワン版マルセイユ・タロット)というのが面白そうだと思って、本を読んでみたりもした。
由緒あるタロットの原版の劣化や経年によってあいまいになった細部に注目し、すっきりと"復元"することで象徴づけをしたり、使える色数を増やすことでお互いのカードの間に繋がりをつけたり、というのも興味深かったが、このタロットの肝は(大沼忠弘先生も強調するように)人物の目線に従ってカードを置いていくというところなのだ。
(視線繋ぎか。おお、さすが、これはなんだかとても映画っぽいぞ)と思ったし、そもそもタロット自体、偶発的に選ばれたひとつながりのカードからstoryが生まれる、というところが(カルヴィーノの小説なんかも思わせる)映画的だと気にいったのだった。
しかし上映後に公開リーディングを見せてくれたアメリカから来て20年とか言うカモワン遣いの人(スキップ・スワンソンさん)*1がいきなり断言するには、"Jodoさんは、ほとんどカード読んでいません、あの人は相手自体を読んでいる、カードではなく(だがそこがいい、天才だから)"ということで、それを聴いても驚かなかったというかさもありなん、という気分になったのは、この映画、とにかく繋ぎ方がユルい。
編集は監督自身ではないが、冗長だし、空間の作り方が適当な感じだし、とても80過ぎの監督の仕業とは思えない。
じゃあつまらないのかと言われれば、とてもとても面白いのだった。
初めから終わりまで、ある種のリズムに貫かれた単純この上ない象徴の連鎖をめぐるうちに、紙芝居をみる子供に帰ったような気持ち。とはいえ、映画とはこれでいいのだという気はさらさらなく、ほかの人にこんなのを真似てもらっては困るという感じも常に心のどこかにあって。
風船=雲
監督の"人柄"の良さと、映画って(ますます)良くわからない、という感想だけを持って帰ってきた。
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*1:スキップさん自身は自分はあくまで正統派カモワン遣い、つまりフィリップ・カモワンの理知的な読みを学んだ、ということをひつこいくらい強調していて、確かにすっきりと視線を読んで繋いでいく気持ちのいいリーディングだった