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赤と青の端切れを黒で繋ぎ合せた奇妙な衣装をまとった彼は白目をむいて列車の先頭に身を躍らせる。
とある朝の通勤風景。
迷惑。
特急列車の頭に居座ると、白い粘液をべっちゃりとあちらこちらに放出。
(なんや自分、手ひどくフられでも、したんか?)。
こんな時間に、都会の真ん中で、満員列車を止めようとは、君、いかな不幸な目におうたか知らんが、やり過ぎやで。
でもあくまで、先頭に居座る。これはよっぽど悪い女に....
で、なんやかんやあって
とうとう列車は止まってしまった。
ああこりゃリンチだ、リンチものだよこりゃ、とハラハラしながら観つめていると、
意外! なぜか優しい人々。
ゆっくりと両腕を伸ばした格好で、人々の頭上を受け渡されつつ、横たえられる彼。
同情心が車内を満たす。
そうか、みんなも手ひどくフられたことがあるのね。
で、何事もなかったかのように元の仮面をかぶって、
心に傷を負った人々が、寄り添いながら暮らす街。