(ぼくは林檎を

地面からひろいあげる
きみはサクランボの籠を地面から持ちあげる
ぼくは短剣をサクランボの籠の中に置く
きみはぼくを置き去りにしようとする
ぼくは短剣をサクランボの中に隠す
きみの目はサクランボの輝きの中で
黒く 黒くなる
きみの家への道を ぼくらは見失った
通りの 葡萄の籠の傍らへと
ぼくらは辿り着いた
この夜の終わりに 売り子たちは
葡萄を
ぼくらに安く売りつけようとする
きみは葡萄をみつめる
ぼくらは売り子たちを見つめる
死は 彼らの顔に
隠れている
売り子たちは 籠のなかの
葡萄を売れ残ったままにして
通りの向こう側へ
火の傍らへと 行ってしまう
ぼくらは火のそばにいる
木々は ぼくらに陰を
贈ってくれる
ぼくらは嫌々ながら それを受け取る
きみは知っている
ぼくは知っている
きみの家への道を ぼくらは見失った
なんて 孤独なのだろう
なんて おごそかなのだろう
ぼくらはお互いを呼ぶ
ぼくは千度もこの夢を見た−
空港のエスカレーターにのって
きみは空へと昇っていった
そして僕は地上に
ただひとり残された
きみの両目の.....
以下略)