今週のお題「梅雨の風景」


部屋のドアを開けて、歩いて、坂を下って、20分くらいたったところに、その池はある。
行くのは大抵、早朝、真夜中、夕暮れ時。
水からはもう夏の匂い。重たげな頭を垂れる紫陽花たち、薄い青、白、青みがかった紫、赤みがかった紫、ピンク。
お寺の脇、馬頭観音と小さな蔵の間を抜ければ、その船着き場めいた隠れ場所に出る。水中に建てられた5,6本の杭、と覆いかぶさるクヌギ(かな?)が画面の上下を作る。直接地べたに腰をおろし,池の中央をはくちょうのボートが横切って行くのを眺める。
空に目をやる。
いつか啄木の小説を読まねばならぬが、違う用法で使われていたら厭だという気持ちがあり、何十年も手を付けないで来た。
この先も死ぬまで読まないかも。
あ。傘を忘れた。