(創造に関係する重要な神名は


ハーリク、バーリウ、ムサウウィルの三つである。
ハーリクとは、万物の可能性を「妊む」
創造の側面であり、ソフィア、すなわち
永遠の知恵として知られている。
スーフィーにおいては、処女マリアが
この役割を象徴している。
処女マリアは、霊を妊んだ
受容的形態だったからである。
バーリウとは「生む」という
創造者の側面である。
処女マリアは御言葉(ロゴス)を生んだという点において
「神的なもの」のこの側面をも象徴している。
第三の名前、ムサウウィルは諸形体を飾る
創造者の側面である。
この側面は、職人、工匠、建築家などと
深い関係をもっている。
これらの人びとは、霊を妊み、生みおとし、
それを可視的形体の中で育むことにより、
処女マリアの創造行為を模倣している。
ムハマンドの娘、ファティーマは
スーフィーによって創造的女性と呼ばれている。
「『主であること』の秘密を握っているのは創造的女性の概念である*1
その秘密とは、神の滋養物を、自らの存在の
実体(サブスタンス)によって保持すること、
自らの存在によって
自分が象徴している神名に
実体を与えることである」*2
ファーティマは、女性的なものの本質を
象徴している。彼女は自分*3を創造した
存在(ロゴス、すなわちムハマンド)の
創造者だったからである。
いいかえると、処女マリアがロゴス、つまり
御言葉の母であるのに対し、ファーティマは
ロゴスの娘であり、さらに
アリーと結婚することにより、イマームの中に
顕現するロゴスを生みおとす。)

*1:ムハムンドのハディース『自己を知る者は主を知る』二十八ページ参照。

*2:H・コルバン『イブン・アラビーのスーフィズムにおける創造的想像力』。

*3:シーア派において、ファーティマは「彼女の父(ムハマンド)の母」と呼ばれている。